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経営理念が絵に描いた餅になっていませんか?
2013/10/29 | ブランディング
「消費者は物ではなく物語を買っている」
「ニーズではなくウォンツ」
「how to sayよりwhat to say」
マーケッターの間では有名な言葉で、消費者の購買行動の変化についての言葉です。
昔 (・・・といっても今から14年くらい前の話ですが)
政府系金融機関が主催する「関西経済フォーラム」 というのがあり、
私は毎年参加していたのですが・・・
14年前に、そこで出会った 大手広告代理店
H報堂の偉い方(当時)が仰っていたのが
Authenticity(オーセンティシティ)
でした。
Authenticityとは直訳すると「信頼性、本物」ですが・・・
端的に言えば「決して嘘をついてはいけない」ということ
と仰っていました。
なぜなら 「嘘をつくと、一瞬にして、ブランドが地に落ちるから」
だと仰って納得した記憶があります。
ちょうど、そのころ 鉄壁のブランド力を誇った雪印が・・・
雪印乳業による雪印集団食中毒事件(2000年)と
雪印食品による雪印牛肉偽装事件(2001年~2002年)
を起こし・・・
見事にブランドイメージが崩れ去ったからです。
私のお師匠で
危機管理の第一人者である佐々淳行先生
から聞いた話ですが・・・
実は、雪印乳業は、その45年前の 昭和30年(1955年)に
「雪印八雲工場脱脂粉乳食中毒事件」というものを起していたそうです。
当時の雪印乳業は、即座に謝罪と製品回収、謝罪広告の掲載、被害者への謝罪訪問など
先手先手で対応措置を展開。
危機管理(リスクマネジメント)の対応という点では、当時の日本の企業の危機管理水準を
遙かに上回る措置であったことから・・・
企業イメージへの打撃を最小限度に押さえたばかりか、長期的に見れば
企業イメージ向上にすら繋がったと言われているそうです。
佐々淳行先生が仰っていたのは・・・
当時の雪印社長であった佐藤貢さんは、「全社員に告ぐ」という文章を作り、
『信用を獲得するには長い年月を要し、
これを失墜するのは一瞬であり、
そして信用は金銭で買うことはできない』
といった旨を記し
「安全な製品を消費者に提供することこそが、雪印の社会的責任である」
と訴え続けたそうです。
雪印乳業は、昭和後期までは『全社員に告ぐ』を新入社員に配り、
八雲工場事件の教訓を常に教え、安全な製品作りを心掛ける教育を施していた・・・
そうです。
「(当時の)消費者は、この雪印の姿勢と物語に賛同」し、ブランド力が向上した訳です。
その結果、雪印グループは、乳業トップ・食品業界でも
屈指の巨大企業グループに登り詰めました。
しかし・・・
グループの事業規模拡大とともに、トップブランドへの驕りが生じ、
安全教育も風化していったのでしょう。。。
30年以上にわたって綿々と続けられてきた「全社員に告ぐ」の配布は、
1986年をもって中止となり・・・
2000年と2001年の事故の頃には
「全社員に告ぐ」 は完全に風化していた。。。
との事でした。
雪印のブランド失墜から14年・・・
阪急阪神ホテルズ「偽りメニュー」 がニュースになり・・・
とうとう、阪急阪神ホテルズの社長が辞任する事態にまでなりました。
阪急といえば創業者の小林一三
箕面有馬電気軌道(後の阪急電鉄)の経営を基に、阪急百貨店、
宝塚温泉、宝塚歌劇団、東宝・・・と多角化を図り、
後に、商工大臣、国務大臣を歴任。
昭和32年にこの世を去るまで政財界で、多大な活躍をされた方です。
そんな小林一三のモットーとして有名な言葉が
「大衆のために」
「自分の計算から出発しない」
です。
「夢の経営者」という異名を持った小林一三さんのの商法は、
様々な経営者のお手本となっています。
いくつかのブログなどで紹介されていますが・・・
小林一三を語る阪急百貨店のエピソード があります
<以下引用>
百貨店の食堂で、カレーライスが大ヒットとなるも・・・
当時、学生は、カレーライスを買って食べるほどのお金がなかったので、
ライスだけ注文し、福神漬を菜にソースをライスにかけて食べるのが流行した。
中には、弁当持参でタダでソースをかけて、福神漬で食べる人まで出てきた。
食堂の係りは困り果て、カレーライスの客が食事を終えたあと、
一回一回福神漬とソースを引き上げてはどうかと提案する。
それが一三の耳に入った。
係りの意見に一三は、
「そんなケチなことをするな。学生がお金がないのは当たり前だ。
そんな学生が遠慮せず食べられるよう、ライスの値段を下げて、
福神漬でもソースでもどんどん出してやれ。」
「彼らはいつまでも学生ではないぞ」と指示した。
<以上、引用終わり>
「(当時の)消費者は、この小林一三の姿勢と物語に賛同」し、ブランド力が向上した訳です。
しかし・・・
グループの事業規模拡大とともに、トップブランドへの驕りが生じ、
「自分の計算から出発しない精神」も風化していったのでしょう。。。
ここで、ふと
「阪急阪神の経営理念は、今どうなっているんだろう?」
と思い、見てみました。
格好よく書かれていますが・・・
あの記者会見を見ると 「絵に描いた餅だよね?」
と思っていしまいますね。
経営理念は、額に飾ったり見栄をはるためのものではない
訳で・・・
絵に描いた餅 になるくらいなら・・・・
シンプルに
小林一三の魂のこもった言葉である
「大衆のために」 「自分の計算から出発しない」
のままにしておき、
それを徹底すれば良かったのでは?
と・・・外野席から勝手に思ってしまいました。
インプットとアウトプット
2013/10/23 | マネジメント・業務改善
こんにちは。ハイフィット社長の吉村正裕です。
今回の話題は「インプットとアウトプット」です。
最近、つくづく感じるのは「“知る”のと“行う”のは違う」ということです。
つまり「頭の中にインプットしただけで、何もしなければ結果は何も変わらない」ということです。
例えば、柔道の場合・・・「背負い投げ」という技がありますが
理屈で
(1)釣手側の肘ないし前腕部で相手の脇を下から固定
(2)引き手を引く
(3)支点を肩ないし背中に置いて、テコの原理で投げる
と知ったところで、試合で投げれる訳がなく・・・
頭で覚えたことを、身体で覚えさせるため、反射的に身体が動くようになるまで、
ひたすら組手練習や本番の試合で経験を積むのが大切な訳です。
よく 「セミナーマニア」 「本マニア」 といった勉強会マニアの方がおられますが・・・
実践出来ていない方が多いです。
とにかく、「アウトプット(出力)すること」
これが大事な事なのです。
ここで1つ注意しなければならない事があります。
「なにしろ、良い話と思ったら実践あるのみ」
というのは、正しい事ですし、
大事な事ではあるのですが・・・・
「とりあえず、実行あるのみ」を鵜呑み・丸のみしてしまい
逆に弊害を起こされる方もおられます。
これまた「セミナーマニア」「本マニア」の方に多いのですが・・・
例えば、店舗運営の場合・・・
「転換率を上げるために【A】を実施した」
↓
「でも、結果が出なかったので、集客を上げるために【ア】を実施した」
↓
「でも、結果が出なかったので、客単価を上げるために【甲】を実施した」
という方。
違いますよね・・・
本来行うべきは、
「転換率を上げるために【A】を実施した」
↓
「でも、結果が出なかったので、転換率を上げるために【B】を実施」
↓
「でも、結果が出なかったので、転換率を上げるために【C】を実施」
なんですよね。
「何か他に良い方法は?」とインプットされる事自体はかまいませんが・・・
「アウトプット前提のインプット」
これが大事なんです。
ヤフー「eコマース革命」について考察
2013/10/15 | ネットショップ・Eコマース
こんにちは。ハイフィット社長の吉村正裕です。
今回の話題は「eコマース革命」です。
Yahoo! JAPANがEC事業における新戦略を発表し、
先週のEC(eコマース)業界は、その話題で持ちきりでした。
EC業者だけでなく、ユーザーも殺到し、
新規ストア出店希望数が、1日で(法人)約1万件、
(個人)1万6000件にのぼったそうです。
「Yahoo!ショッピング」は従来までは、出品企業から
出店料(初期費用2万1000円、月額費用2万5000円)と、
売上ロイヤリティ(売上の1.7~6%)を徴収していました。
ところが、ヤフー会長でもあるソフトバンクの孫正義社長が
2013年10月7日に「eコマース革命」として
「Yahoo!ショッピング」の上記の費用について、すべて無料化を発表し、
「2019年までに国内EC流通総額商品数で1位になる」とぶち上げた訳です。
国内のECモール最大手の「楽天市場」では、
初期登録費用として6万円、
月額出店料1万9500~10万円、売上ロイヤリティ2.0~6.5%
が必要で、
近年は半ば「アタリマエ化」していたので、余計に衝撃が走ったわけです。
今回の孫さんの発表で私が気になったのは
「どこで儲けるの?」
という事と、
「なぜ、今、eコマースのテコ入れ?」
の2点でした。
国内EC市場を見渡せば、昨今は、楽天とアマゾン という
2大巨頭が飛びぬけており、
最近のYahooショッピングは凋落傾向だったからです。
現時点では・・・
【楽天市場】
●出店数 4万 ●商品数 1億5000万点
【Yahoo!ショッピング】
●出店数 2万 ●商品数 8000万点
といった具合で、
Yahoo!は、知名度とポータルサイトの集客力があるとはいえ、
現状を打破するのはそれほど簡単とは思えない訳です。
しかも、出店利用料やロイヤリティを放棄すれば、
Yahoo!ショッピングの収益が激減する訳です。
しかし、孫正義 さん自らが登場して「革命」と宣言したのだから、
何か勝算があるに違いない。
孫正義 さんといえば
『孫の二乗の兵法』という言葉を生み出したほど、
「孫子の兵法」の使い手・・・
『孫子の兵法』の第七章:軍争篇に
有名な『迂直の計』というものがあります。
この迂直の計は、戦いの中で最も難しいであろう勝利への道を作り出す方法です。
『軍争の難きは、迂を以って直となし、患を以って利となすにあり』
現代語に訳すと
「回り道をしながら直進し、損をしながら得をする」
といったところでしょう。
Yahoo! は、もともとポータルサイトであり、
収益構造は「広告収入」が主体。
親会社のソフトバンクは今や「通信会社」です。
Yahoo!にしてみれば、
ECでの収益は微々たるものだから、
『ポータルサイトなので、広告収入を増やしていく』
という基本路線は変わっていない筈です。
ということは、
Yahoo!ショッピングの出店数や商品数を増加させると、
ポータルサイトたるYahoo!への広告が増える・・・という訳ですね。
まさに「損して得とれ」という訳でしょう。。
日本の BtoC EC(電子商取引) 市場規模は、
2011年の数字で8.5 兆円と伸び続けていますが、
EC の浸透を示す指標である「EC化率」は 2.83%・・・
つまり、小売業・サービス業において
ネット通販している割合は、3%未満なのです。
だから、
『孫さんのねらいはリアル店舗の掘り起しではないか?』
と勘ぐってしまう訳です。
それと、もう一つ。。。。
ソフトバンクは米国のスプリントを買収したのは
記憶に新しいところですが、
スマホ普及率が過半数を超える米国は、
リアル店舗による「オンラインストアの併設」が盛んです。
米国のトレンドを日本に持ち込んで戦いを有利に進める
という事を、昔から得意としている孫正義さんは、
この流れも当然視野に入っているでしょう。
という事を考えていると
「なぜ今、eコマースなの?」
という疑問も解ける気がしますね。